作家インタビュー
vol3.『靴logi』
『自分らしくシンプルな暮らし
無いものばかりに捉われずに 一つのものを長く、大切に使い続けたい
そんなあなたの暮らしにぴったりと寄り添えるようなモノを』
義肢装具士の資格を持つ革作家【靴logi】さん。
築60年の元お茶屋さんをセルフリノベーションされたお店の前の通りには、
今日もゆったり 心地よく 丁度いい 時間と地元の人々が流れてゆきます。
中島さんは義肢装具士の資格をお持ちですが、そちらのお仕事には進まれなかったんですか?
最初に仕事について考えだしたのは、中学校くらいの時なんです。
あんまり、何のためにとか何をしたくて勉強していくのかとか分からずにやる勉強っていうのが好きじゃなくて、「高校行きたくない」みたいなことを言ってたら、「じゃあ、何するの?仕事…」ってなって、いろいろ考えまして、自分で髪切ってたから美容師もいいかもしれない、子供好きだし保育士もいいかなぁとか。
でも、どれもしっくりこなかったんです。そんな時に、母親が看護師をしていたんですが、こんな仕事があるよって紹介してくれた仕事が義肢装具士でした。
父親はサラリーマンなんですけど、電車を作るというモノづくりの仕事をしていました。母の医療の仕事、父のモノづくりの仕事、その真ん中の仕事、二人の仕事の間みたいなのが、なんとなくずっと親を見て育ってきた中で、なんかいいなって。で、義肢装具士になりたいなって考えたのが一番最初のきっかけでした。
でも、義肢装具士になろうとおもって学び始めた頃、パラリンピックで使用するスポーツ義足や体に身に着ける治療用の道具、更生用の道具を作る仕事をやりたいと思って進んだものの、学びだして、二年生くらいの時に臨床実習に行って義足を作らせてもらう機会があったんですが、全然面白くなくて、全然イメージしていたものじゃない、これじゃないと感じ始めていた時に、同じ臨床実験の中で靴も作らせてもらったんですね。それがものすごく楽しくて、その時に方向転換して靴つくりを自分の仕事にしようと決めました。
靴logiさんは革作家さん?靴作家さん?
先に靴があって、革を触ってって、そこから革って感じです。
革って丈夫なんですよね。体へのなじみのいい素材で柔らかく耐久性があるところがすごくいいところで、長くもつってだけじゃなくて、ボロボロになってもちゃんとメンテナンスさえしてあげれば、きれいに保てれたりするし、それがだんだん味になる。しわ感とか汚れた感じだったりも含めてなんとなく使っている人の空気感みたいなものが残る、その人のその時のその感じが残る、写真とちょっと似てるのかなと思います。いわゆる味が出るってやつなんですけど、耐久性があるからこそ味を出していけれる、育っていける一緒に長い時間を共にできるというところが革のいいところかなって思います。
革は使い始めてから知ることもいっぱいあって、大きく分けるとタンニン鞣しとクロム鞣しという種類になるんですけど、今お店で使っているのはタンニン鞣しです。形を作るには、水にぬらして形をつけてるんですけど、それはクロム鞣しではできなくて、性質の違いがいろいろあるのですが、いわゆる味が出たり、つやが出たり、色が変わってくるっていうのはタンニン鞣しだけなんです。クロム鞣しは色はほとんど変わらないです。
世の中の革製品の90パーセントくらいはクロム鞣しで、タンニン鞣しは一割くらい。昔ながらの革の作り方の革で、環境負荷も少なくて、土にかえる革、環境面と味が出て形が作れてっていう面白さから、ほとんど今はタンニン鞣しの革ばっかり使うことにだんだんなってきたりして、知れば知るほど革って面白いんです!
蒲郡でお店を構え暮らして思うことはありますか?
この仕事を始めて九年目になって、そのうちもう半分くらい蒲郡にいるんですが、特にこの地域っていうのもあると思うんですけど、個人事業のお店やってる方が多い関係もあるのか、すごくよくしてくれるんです。
子供にいつもお菓子をくれたり、お客様でも気にかけて立ち寄ってくれる方も多いし、本当に皆さん気にかけてくれる!
自分がこういう仕事をしてるってヒトって知ってくれている人がいるんだなって思えて、ここが自分の居場所で、ここにいていいんだなっていう感覚を持たせてくれるってことがちょくちょくある気がします。
お店の前の通りは、丁度いい人通り。地元の人しか通らないけど、知ってる人は訪ねてきてくれる場所。ゆったり時間の流れる感じがとても自分に合っていると感じています。
今のモノづくりに思うことは?
すごい便利な時代でポチポチすれば何でも買えるし情報もあって、十円でも二十円でも安いものが買えてしまう時代、モノを作る側としたって工場で大量生産した方がどう考えたって安いし、効率悪いじゃないですか?
買う側としても、高いものを選ぶ理由って何があるのかなって…
「作ってる理由ってなんだろ」っていろいろ悩んだときに、やっぱり問題があるとしたら、大量生産でうまれる大量廃棄だったり、環境面によくない所。
今の便利になっていく世の中だからこそ僕らはこういう仕事ができている面もあると思うので、必ずしも悪いというわけではなく、「よりよい社会、よりよい世界」がこの先にあるのだとしたら、いろんなモノの背景にあることまでいろんな人たちが知る事が出来ること、モノを大切に出来て、子供のそのまた先の子供たちが今と変わらない、今よりももっといい自然環境の中で暮らしていけることが先にあるのだとしたら、、、
デジタル化が進んでいってることには、距離が離れていても、もっとリアルで会うのと同じような感覚で話ができ、もっと遠くの人とつながってモノづくりをする人が販売できたり、モノの背景などを伝えられる世界に進むだろうとは思っているんですけど…それをぐって進めた意味はきっとあるんじゃないかなと思います。
当たり前に買えて便利だけど、そこにモノと人の距離が離れれば離れるほど、そのモノに対する愛着とか愛みたいなものってすごく減ると思うんです。
なんでかっていうと、「そのものにある背景」が分からないから。たとえば、「この人がこういうものを作っている」それを知っているだけでモノに対する愛着みたいなものがわくと思います。
「モノづくりをする」ということは、モノと人との距離が離れて行ってしまう世の中にあってその対極にあるもので、「モノを大切に使うために選ぶ」ことに興味のある人は、きっとそういうモノの買い方、使い方、付き合い方をする人なのではないかと思います。
靴logi
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愛知県蒲郡市元町13-17
〈代表〉中島徹也
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〈HOLIDAY〉不定休
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